人の出会いは面白いな
俺が高校一年の時の出来事だ。
俺はS学園のバスケ部に所属をしていて、群馬県の猿ケ京でやった地獄の夏合宿の最終日で起こった出来事だった この日は門限を22時と言う異例の遅さに設定されていて、ほとんどの連中が外出をしていた。
俺もご多分に漏れずにラーメンを食いに出かけたりして、宿舎に戻ったのは門限ギリギリだった。
そして、門限をすぎても三年生のS先輩が帰ってこない。
コーチにばれたら大目玉どころではないので、どうしようかと全員で対策を考えていたら、案の定コーチが「おい、誰かSを知らないか」と血相を変えて怒鳴る。
しかし、誰も知る訳はない。
知っていれば、門限破りはないのだから。
結局、懐中電灯を持ち、ほぼ全員で探しに出かけたが見つからずに宿舎にもどったのだ。
そうしたら、なんと当のご本人のS先輩は部屋の隅で大きい体を縮めて座っていたのだ。
聞いてみれば、宿舎のすぐ下にあるA湖の湖畔で東京の女子大生(二年だというから二歳年上)の二人組と、夜間は絶対に不可であるボートを漕ぎ出して遊んでいたと言う。
コーチの心配が怒りに変わったことは言うまでもなかった。
これがS先輩の出会いだったのだ。
その後S先輩はスポーツ特待の誘いを断り、普通に受験してR大学の経済学部に入学した。
卒業後はN証券に入社してバリバリの証券マンになり、常に成績はトップ5に入るほどの営業マンになった。
そして3年後に結婚式の招待状が俺に届いた。
俺は迷わずに出席させていただく旨を返信した。
そしてその結婚式で、驚くべき事実が解ったのだ。
新婦はなんと、あの合宿最終日の夜、S先輩とA湖でボート遊びをした女子大生二人のうちの一人だったのだ。
実に美しく、とてもS先輩を逆ナンパした女性には見えなかったし、後日S先輩にそのことを言うと「おう、本当におとなしいし、謙虚な女だよ」と言う。
まあ、幸せならば何も言うことはないので「そうでしたか、先輩もいい女性と結婚されてよかったですね」としか言いようがなかった。
人の出会いというものは、本当に面白いものだ。
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